『あくせく働くな:ラジオアリーチェ』鑑賞ノート

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この映画は、高度成長期後の景気後退と、1973年の第4次中東戦争に起因するオイルショックによって、「危機の時代」「鉛の時代」と形容される、混乱期を迎えたイタリアの社会状況を、実在した「ラジオアリーチェ」にまつわる物語として描き出した作品です。

◆ラジオアリーチェについて
イタリアでは、ラジオやテレビ放送の電波を国家が独占していましたが、1976年に最高裁判決が、国家による電波の独占は違法だという判決を下し、一気に社会運動関係や音楽などのコマーシャルな放送を行うラジオ放送局が乱立しました。ボローニャという大学地区では、アウトノミアにも関わる、数人の若い詩人たちによって、ラジオアリーチェが開設され、アーティスト、活動家、労働者、学生、ヒッピーなどの若者が放送局に集い、様々な番組が放送されました。

1977年3月11日、ボローニャで行われていたキリスト教聖職者団体の集会で、抗議活動を行おうとしていた学生グループに国防警察が介入・攻撃しました。警官の発砲で、アウトノミアのグループ、ロッタ・コンティヌアに関わるフランチェスコ・ルロッソが殺害され、その日のうちに、抗議運動はボローニャの大学地区を占拠しました。この事件をきっかけに、翌12日には、ローマやボローニャなどの都市でアウトノミアたちが蜂起し、暴動に発展しました。一連の動きを逐一放送していたラジオアリーチェを、暴動の煽動者であるとして、警察が急襲し、強制的に閉鎖、関係者を逮捕します。

◆映画ではいくつかの話がDJのようにミックスされていて、転換に気づきにくく、ストーリーが分からなくなる場合があります。
以下に主要な話を羅列しておきます。

◇ラジオアリーチェ
・自由ラジオ
・Call In(電話をそのままラジオで放送)
・政治や運動の話(政府、労働組合、新左翼、労働の拒否、デモ など)
・詩やおとぎばなし、音楽、コミックス
・人生相談
・お買い得情報
・フリーセックス
・野外イベント
・フェミニズム運動
・イタリア共産党とキリスト教民主党の連立(歴史的妥協)
◇主人公スガロとペロの銀行強盗のためのトンネル掘り、家族との確執
◇高利貸しに暴行し、起訴されたフランコとその弁護士マルタ
◇ワイン業者を装い、違法な商売や盗みを働くマランゴンと、警部補リッポリスとその部下アントニオ
◇ラジオアリーチェの技術者ビジと弁護士マルタ、ラジオアリーチェの発案者ウンベルトとの三角関係
◇警官に殺害された医学生フランチェスコの抗議デモから暴動、そして弾圧
◇警察によるラジオアリーチェへの襲撃