秋が来た日に必ず思い出す詩があります。何度も書いたことかもしれないが、西脇順三郎の『近代の寓話・秋』。子どもの頃、電気ストーブの剥き出しのニクロム線に鉛筆をあてて、その不思議な香りを嗅ぐのが好きでした。『秋』に出会って、あれは「バラモンのにおい」なのだと知らされたのです。今日、秋が始まった感じがしたので、STAEDTLERの青い鉛筆の削りかすを燃やして、バラモンとパンデミックの秋に思いをめぐらす。
タイフーンの吹いている朝
近所の店へ行って
あの黄色い外国製の鉛筆を買った
扇のように軽い鉛筆だ
あのやわらかい木
けずつた木屑を燃やすと
バラモンのにおいがする
門をとじて思うのだ
明朝はもう秋だ西脇順三郎「近代の寓話・秋Ⅱ」