永瀬義郎の『版画を作る人へ』の中に、木版を布に摺ることについての記述がある。
版画を布地に模様づける方法
布地に模様を摺って、カーテン、テーブル掛、装幀布などを作るのは中々雅致があるものです。女帯なども無論できるわけですが、広い面積の上に大柄なものを摺ることは染色の方法でないと難しい。芋版で、模様を一面に無造作にスタンプ押しにしても面白いし、インド産の動く石(ゴムのような石です)に模様を彫り、油絵の具で畳摺りにしても原始的なものが出来て愉快です。薄絹の裏打したようなものでしたら、紙を摺るのと同じ方法で、バレンで摺れますが、少々厚い布だと、バレンが利きません。で、全て布に模様をつける場合は、大きな面積に絵を摺るという事を避けて、小さなカット風の模様を一つ一つスタンプ摺にして、うまく案配するのです。あるいは大小三個位の異なった模様を組み合わせるのです。摺りは全て紙のように明瞭にいきません。明瞭でないところにまた面白みもあるわけですが、木版になるとなお一層困難になります。小さな紙入れぐらいのものでしたら、どんな様式の版でも楽ですが、カーテンのような大物になると畳摺りも出来ませんから、平らな台の上へ乗せて、部分部分摺って行くのです。木版でしたら、版木の上に片足を乗せ、全身の重みで圧し摺りにするのです。この圧し摺りにする際は必ず圧し摺りにする部分の布の下に、コルク版か厚いゴム板を敷かないとうまく摺れません。
A3BC: 反戦・反核・版画コレクティブでは布摺りを試していて、それは重要な要素のひとつなのだが、どうしても摺りにムラができてしまう。それもひとつの味になりますが、もう少しなんとかしたい。油性のインクで摺るので、ゴム板は長持ちしそうにないし、コルク板はチップの隙間が浮いてきそうだ。ホームセンターをうろうろしていたら、テーブルの上に敷くようなビニールシートがあった。今下敷きにしているカッターマットよりは弾力がある。ゴム板よりは硬いが、少しは油に強そうだ。試しに少し切り売りしてもらう。週末に木版を布に摺る予定があるので試してみたいと思う。