生きた貨幣とヒップホップ

ザ・ブリティッシュ・インヴェイジョンよりもヒップホップの方が革新的だという研究発表があったらしい。その通りだと思う。研究はヒットチャート登場以降の分析のようだが、ラップ、ブレイクダンス、グラフィティ、DJ、パーティといった総合的な表現の革新は、他に類を見ないものだろう。

先日、大きな地震があった日に、アンスティチュ・フランセで開かれていた「生きた貨幣」というイベントに行った。ロベール・ブレッソン『ラルジャン』の上映から始まったので、その後のトークや鼎談は映画批評みたいな感じになってしまっていた。「貨幣」についてのリサーチのつもりで行った自分にはいまひとつだったが、鼎談終了後に屋外ステージで行われていた「東京ELECTROCK STAIRS」のダンスはちゃんと「生きた貨幣」をテーマにしていたようで良かった。初めて知ったのだが、ヒップホップをベースにしたダンスグループらしい。「無形の欲動が波立ち騒ぐ身体(兼子正勝)」というものが表現されていたように思えた。それはヒップホップの経験無しでは表現出来ないものだろう。ブレイクダンスは「流れとしてのリビドー」なのかもしれない。

地震がやってきて途中で席を立った。彼らは知ってかしらでか、ダンスを続けていた。