小学生の美術の時間、版画の授業で必ず使う「バレン」。何の疑問もなく受け入れていたし、よくある韓国経由で入ってきた中国の文化だろうと思っていたが、どうやら違うらしい。バレンが一番信頼できる気がして、自作のものを愛用していますが、よく考えてみると、それほど長持ちしない竹皮を使ったりしなくても、いまや他にいくらでもやり方あるだろうという摺り。海外ではプレス機か、手摺りの場合はスプーンを使うのが主流のようです。
世の中にはバレンについて研究したりする奇特な研究者もいて、ネットでも公開されている。著者のヒルド麻美さんは「バレン」ドイツ語説を唱えていました。
「バレン」という語は1400 年代,室町時代から日本に存在していたが,それは,木版や印刷とは関係なく,「たわし」が出現する1700 年代後期まで,バレン(バリン)の根から作った,物をこすってよごれを落とす一般的な道具の名称であったということ,一方『日葡辞書』『羅葡日辞書』が木版関連の用語を周到に収録しているにもかかわらず,摺り道具だけが記載されていないことから1600 年代までは日本には確立した摺り道具がなかったと考えられること,こすり洗いの道具である「バレン」が摺り道具に転用された例も記載されていないという事実,グーテンベルク式印刷機とともに日本に持ってこられた円形の “Ballen” が,1600 年代初期にキリシタン版の木版部分の摺りに使われていたと考えられること,そのようなキリシタン版の印刷は九州でのみならず京都でも行われたという事実,それに続く時代の延宝から正徳(1673 ~1715)にかけて,木版における諸技術が大発展をとげ,日本の円形の摺り道具が考案されたと考えられる時期的な前後関係,および“Ballen”という発音が日本人に聞き取りやすく,表記しやすく,借用しやすいという音声的理由から,日本の摺り道具「バレン」は,木版の上に置いた紙を上から摺る“Lederballen”ないしは版面にインクをつける道具“Ballen”という,グーテンベルク式印刷機とともに日本にもたらされた円形の印刷関係道具のドイツ語名称から,17 世紀後期から 18 世紀初頭に日本語に借用された語だと推測する。
先生の一人だった城所祥氏が参加していた「鑿の会」という木口木版グループのグループ展か何かに行った時、そのメンバーたちが熱く交わしていたバレン談義が懐かしい。城所祥氏の作品は好きだったし、小さな木口木版を1点持っているのですが、その後若くして(53歳、自分と今の歳と変わらない)亡くなったことを今ネットで知る。ご冥福をお祈りします。