いきさつはよく分からないが、岡山にいる9歳離れた姉がキャンディーズの解散ツアーだったのか、コンサートのチケットを買ってくれたので見に行った。多分高校一年生の時だ。その頃、キャンディーズは常にテレビに出ていたし、街でもよく曲が流れていたけれど、特にファンというわけでもなかったので、コンサートの記憶はほとんど無い。衣装が妙にキラキラしてた感想程度か。彼女たちは「普通の女の子に戻りたい」と解散したわけだが、そうは問屋が降ろさない。キャンディーズ時代とのギャップが印象的ということもあるだろうが、夢の遊眠社の「怪盗乱魔」で沖田総司役だった伊藤蘭に涙がとまらなかったし、なにより「黒い雨」の田中好子にはまいった。何の因果か、田中好子は福島第一原発事故からまもない4月にガンで亡くなった。荻窪に住むようになって、やはり井伏鱒二は気になっている。「山椒魚」を教科書か類するもので読んだ記憶はあるが、他は読んでない。若い頃に荻窪に立ち寄って井伏鱒二の家を探した記憶があるので、荻窪風土記ぐらいはめくったのかもしれない。荻窪の古本屋で「黒い雨」の文庫本を買う。盗作騒動もあったいわくつきの小説だし、その評価や、原爆文学として認められているかどうかはわからない。「広島の第二中学校奉仕隊は、あの八月六日の朝、新大橋西詰めかどこか広島市中心部の或る橋の上で訓示を受けているとき被爆した。その瞬間、生徒たちは全身に火傷をしたが、引率教員は生徒一同に「海ゆかば……」の歌をピアニシモで合唱させ、歌い終わったところで「解散」を命じ、教官は率先して折から満潮の川に身を投げた。生徒一同もそれを見習った。」と[日本人]が二度と戦争をしてはならない理由が1ページ目に記してあった。