裏窓を見ると、なぜだか、西脇順三郎の『旅人かえらず』を思い浮かべてしまう。
ばらという字はどうしても
覚えられない書くたびに
字引をひく哀れなる
夜明に悲しき首を出す
窓の淋しき
裏窓を見ると、なぜだか、西脇順三郎の『旅人かえらず』を思い浮かべてしまう。
ばらという字はどうしても
覚えられない書くたびに
字引をひく哀れなる
夜明に悲しき首を出す
窓の淋しき
「東京には空が無い」と智恵子はいったそうだ。
そんなことは無いだろうとずっと思っていた。
久し振りの梅雨の晴れ間に、空の写真を撮ろうと近所を自転車で走った。
空は、あるにはあったのだが、夢のような、かすかな空だった。
MINOLTA SR-T101 x MC W.ROKKOR-SI 1:25 f=28mm x FUJIFILM 業務用 100
28mmの中古レンジファインダーフィルムカメラを探していましたが、どれも元々が高級カメラらしく中古でもお高いので、安いものはないかと目にとまったのが、28mmレンズの付いたジャンク扱いのミノルタSRT101。ユ-ジン・スミスが「水俣」の撮影に使った名機とのこと。送られてきたカメラはかなり傷んでいるようです。メンテナンスをしてなんとか使えそうになりましたが、28mmレンズを付けてファインダーを覗くとなんだか黄色い。コーティングというわけでもなさそうなので、調べてみると、この「MC W.ROKKOR-SI 1:25 f=28mm」はアトムレンズというものらしい。放射性物質の酸化トリウムを添加したレンズで、トリウムの含有量が多いものだと、2.0μSV/hrを越える放射能を出し続けているそうです。恐ろしいレンズを手に入れてしまいましたが、実はアトムレンズはけっこうたくさん作られていたようです(Radioactive lenses)。さすがに今は作られてはいないそうですが、放射性廃液の「ガラス固化体」はこの技術を使っているのだろうなと思うと、考えさせられるものがあります。
アトムレンズは放射能のせいで黄変が進行するとのこと。このレンズは1969年発売なので、50年の経年黄変があります。紫外線を当てると黄変が改善されるらしいのですが、せっかくなので放射能を通した世界を写真に収めようと、黄変したままのレンズを持って、東大和の薬用植物園に行きました。薬用植物園には2~30年前に一度行ったことがあって、燃やした煙を吸うと、あっという間に気が狂ってしまうらしい大麻という植物や、根っこを食べると朝まで走り続けてしまうらしい、ハシリドコロという毒(ロート)を持った草などが生えていて、驚いた覚えがあります。アトムレンズで撮影するにはちょうどいいかなと思いました。
大した放射能ではないとはいえ、反核の自分としてはこのレンズをいつも持ち歩くわけにもいかないので、他に放射能無しの28㎜レンズを手に入れないとなりません。このレンズは押し入れの奥にでもしまっておいて、いつか原子力発電所を撮ろうと思います。
分解したミノルタSRT101は糸だらけの面白い機械でした。この連動糸は50年以上切れずにいるようです。シャッター音がえらく大きいので普段は使いにくそうですが、これぞ一眼レフといった硬派なカメラです。