若いころに自転車とかで遠出するような、自分探しの旅をしたことはない。15年ほど乗っていたママチャリが変な音を出し始めた。そろそろ買い替えの時期だと思い、自転車を調べていて、クロスバイクとかにしたら、行動半径も広がると考えた。20キロ程度なら楽勝とのこと。荻窪から半径20キロを調べると、東は亀戸、西は立川まで行ける計算だ。早速、近所の自転車屋に行って、安くて良さそうなものを探すと、Khodaa Bloomという日本のメーカーが作っている入門車が三万円台であったので購入する。ママチャリさん、長い間ありがとう。24段ギアなんて乗ったことがない。とりあえず慣れるために10キロ程度走ってみようと、地図を見ていたら、荒川が大体13キロと案外近いことに気づいた。荒川なんて夢の島あたりの遠い河だとばかり思っていたが、秩父の長瀞も荒川だったと思い出す。ということで「彩湖」というヒッチコックの映画のような場所を目的地にした。環八から笹目通りに入って、高島平のあたりで荒川に向かう。電車で行くと随分遠回りさせられていた、マルセル・デュシャン「泉」のレプリカがある板橋区立美術館も近い。荒川の土手に上がってあたりを見渡す。多摩川だと山とか起伏があって「風景」になるのだが、埼玉らしい色気のない見晴らしだ。対岸に渡る橋を探しながら、荒川サイクリングロードを流す。土手やらグランドやらの草刈りをしていて、草の強いにおいがする。秋ヶ瀬橋を渡り彩湖へ。この調整池も色気が無い。途中でおじさんたちが模型のヨットレースをしていた。カウントダウンがはじまり、スタートしたはずなのだが、どのヨットもほとんど動かない。風があまりなかったからかどうか分からないが、面白そうではなかったので、ふたたび土手にあがると、河川敷に数軒のムラが出来ていた。里山的に整備されていて、小さな畑もある。増水は心配だが、人間はそうやって、自然と闘い、共存しながら生きてきたことを思う。河川敷の隣は整備されたゴルフ練習場だった。