MINAMATA

ユージン・スミスのドキュメンタリードラマ『MINAMATA』がやっと公開されるそうだ。主演のジョニー・デップのゴシップのせいで公開が遅れていたとのこと。それはさておき、スーザン・ソンタグが『写真論』のなかでユージン・スミスについて少し触れているので、紹介しておく。

住民の大部分が水銀中毒で身体障害をきたし、徐々に死に近づいているという日本の水俣の漁村で、ユージン・スミスが一九六〇年代の終わりに撮った写真は、それらが私たちの憤りをかきたてる苦悩を記録しているから、私たちを感動させもするし、またそれらがシュルレアリストの美の基準にかなう、苦悩の優れた写真であるから私たちを遠ざけもするのである。スミスが撮った、母親の膝の上で身をよじる瀕死の若者の写真は、アルトーが現代のドラマトゥルギーの真の主題として求める、ペストの犠牲者にあふれた世界の、一枚のピエタである。実際、一連の写真はそっくりアルトーの残酷演劇の映像になるようなものである。