写真について(1)

「その中央にヨナは実に細かい文字で、やっと判読出来る一語を書き残していた。が、その言葉は、Solitaire(孤独)と読んだらいいのか、Solidaire(連帯)と読んだらいいのか、分からなかった(アルベール・カミュ『ヨナ』)」奈良原一高写真集『王国』より

 

ある女性に好きな写真家は誰かと聞かれて、奈良原一高と答えたのですが、よく考えてみると、本当に奈良原一高が好きなのかどうか。はじめて「写真」を「芸術」として認識したのは、確かに奈良原一高の写真でした。出版された当時に『昭和写真全仕事9』を購入して、これまで古本屋に売る事もなく、たまに開いています。

新聞/雑誌の報道、グラビアは写真を使ったデザインだ。デザインといえば、レコード・ジャケットは未知の世界への入り口だった。レッド・ツェッペリンやピンクフロイドのジャケットをデザインしたヒプノシスの斬新な世界に、特に惹かれた。

それでは「写真」を見たのはいつかと思い出すと、プログレッシヴ・ジャズロック・バンド「ソフトマシーン」の「Alive & Well: Recorded in Paris」の裏ジャケだったと思う。買ったばかりのレコードに針を落とし、録音スタジオの雑然とした机の上を写しただけの写真をずっと眺めていました。

雑然といえば、荒木経惟や森山大道、写真家と言えるかどうか分かりませんが、藤原新也のアジアの写真や都築響一の80年代の東京の部屋の写真集を思い出します。そして現在、街から猥雑なものやゴミは不可視化され、あらゆる表現に満たされ混沌を極めていた都会はきれいごとになってしまった。