今年の1月に自由芸術大学で「知られざる共同体──ゴッホと画家組合 」というタイトルでレクチャーを行った。続編として、今年の6月12日に明治大学教養デザイン研究科の特定課題講座「風に吹かれて テントは世界を包む2018」の中で「神話と共同体《プロメテウスとしてのヴァン・ゴッホ》」と題した講演を行うことになった。機会を作ってくださった企画者の丸川哲史さんに感謝します。
ギリシャ神話の英雄〈プロメテウス〉は神々の火を盗み人間に与えた。炎の画家〈ヴァン・ゴッホ〉は1880年12月23日、左耳を自分の身体から盗みとり、ひとつの太陽としてわたしたちに贈与した。共同体を夢見て「人間たちの血にまみれた神話」となったゴッホの太陽に焼かれて、いくつもの試みが行われた。その情動と可能性をバタイユの体験や白樺派の情熱を手がかりに考えたい。
明治大学の校内に建てられた、劇団「野戦之月海筆子」のテントは象徴としての共同体なのかもしれない。いや、劇団はひとつの共同体だろうし、テントの中で俳優と観客は一体となる。「野戦之月」の演劇に特徴的な「火」は〈プロメテウスの火〉であり、そのテントは赤瀬川原平の「宇宙の缶詰」のように宇宙を包み込む。宇宙への入り口となったそのテントに入った人々は「人間たちの神話」に押されて、宇宙に飛び出すのだ。
☆バタイユ研究も行っているフランス現代思想の岩野卓司さんにコメンテーターとして登壇いただけるのも楽しみ。
2018年6月12日(火)19:00/18:30開場 明治大学和泉キャンパス特設テント
特定課題講座「風に吹かれて―テントは世界を包む 2018」 6月11日(月)~16日(土) 毎回18時半開場19時スタート 明治大学和泉校舎特設テント(毎回無料、事前申し込み不要) 主催/明治大学大学院教養デザイン研究科 協力/テント劇団「野戦之月」
6/11(月) 講演「自分を好きになる禅のヒント」講師:笠倉玉渓(人間禅) 禅は自己の位置づけを「縁起」という調和理論に見出し、全体と自己との関係性を明らかにする。他者承認に頼る若者の漠然とした不安感へのヒントとして禅を紹介したい。
6/12(火) 講演「神話と共同体《プロメテウスとしてのヴァン・ゴッホ》」講師:上岡誠二 (芸術活動家) 共同体を夢見て「人間たちの血にまみれた神話」となったゴッホの太陽に焼かれて、いくつもの試みが行われた。その情動と可能性をバタイユの体験を手がかりに考えたい。
6/13(水) 講演「セトラー・コロニアリズムとアメリカ合衆国――不可視化される先住民族 と核開発」講師:石山徳子(教養デザイン研究科「平和・環境」コース) アメリカの核開発を、先住民族の身体と文化の「消去」を前提にしたセトラー・コロニアリズムの構造と連動したプロセスとして捉える。
6/14(木) 学術ワークショップ「石川啄木を語る夕べ―留学生の報告と映画等を通して―」 コーディター:池田効(教養デザイン研究科「文化」コース) 石川啄木は、18ヶ国に翻訳されている国際的な文学者でもある。大いに啄木について語っていただく夕べにしたい。
6/15(金) ドキュメンタリー映画+討論会(「大テント―想像力の避難所―」) 監督:陳芯宜(映像作家、台湾テント劇団「海筆子」メンバー) コーディネーター:羅皓名(教養デザイン研究科博士後期課程、「海筆子」メンバー) コメンテーター:丸川哲史(教養デザイン研究科「平和・環境」コース) テント劇は台湾において「想像力の避難所」となった。「台湾海筆子」によるテント活動の台湾での十年に渡る足跡、及び日本や北京などにおける活動の軌跡について紹介します。
6/16(土) ワークショップ試演会「イーハトーヴの鍵」 (テント劇団「野戦之月」+教養デザイン研究科教員&院生) 脚本=森美音子、ばらちづこ、丸川哲史、監修=桜井大造 かつて古代中国人は「天」を正円として、「地」を正方形としてイメージしていました。今回の試演会はそのような、人類の原初的感覚にいざなう試みとなるでしょう。